既存戦力が無傷で躍動したリヴァプール 圧倒的な一貫性のカギはケガ人の少なさ
競争力の高いプレミアリーグにおいて、シーズンを通して高いレベルで一貫性をキープすることは容易ではない。その意味で今季のリヴァプールのパフォーマンスは過去数シーズンの中でも傑出したものだったことがわかる。
悲願のタイトルにはまた一歩届かなかった。プレミアリーグを3シーズン連続の2位で終えたアーセナルの成績は決して非難の対象となるものではない。しかしながらノースロンドンの名門にとって、過去3シーズンの中で優勝から最も遠い2位だった事実は否定できない。
スタートダッシュには成功したと言っていいだろう。第7節までは5勝2分の無敗で切り抜けた。ウォルヴァーハンプトンやアストン・ヴィラといった高い攻撃力を誇るチームを無失点に抑えたのに加え、レスター戦やサウサンプトン戦での逆転勝利に垣間見た勝負強さは、優勝するチームのそれだったかもしれない。
しかし第8節でダークホースのボーンマスに完封負けを喫してからは、一貫性に欠けたようにも見えた。黒星こそ少ないものの下位のチーム相手の引き分けが目立ち、着実に勝ち点を積み上げる首位リヴァプールとの差は徐々に開いていった。
失速の原因の中でも一番大きなものはケガ人の続出だろう。レギュラー格の中でシーズンをケガなく終えたのは、ダビド・ラヤ、デクラン・ライス、レアンドロ・トロサールの3選手のみ。チームの顔である鉄人ブカヨ・サカがシーズンの⅓を棒に振ったことはもちろん、カイ・ハヴァーツやガブリエル・ジェズスといった前線中央での起用を想定された2選手の離脱時期が重なったこともミケル・アルテタ監督にとっては大きな誤算だったはずだ。不動のセンターバックコンビの片方を担うガブリエウ・マガリャンイスの長期離脱も、来シーズンにも影響しかねない懸念事項となった。
もちろん収穫もあった。代役を務めたミケル・メリーノは本職ではないポジションで7ゴールという数字を残し、生え抜きのイーサン・ヌワネリやマイルズ・ルイス=スケリーは与えられたチャンスを生かしてスターダムを駆け上がった。しかしこの次元のイレギュラーの連続は、リーグ制覇を目標とするチームにとって到底許されたものではなかった。
事実、前述のような主力選手が大きなケガなく1年を通して稼働した昨シーズンは、マンチェスター・Cとの優勝争いであと一歩のところまで迫った。最終的に勝ち点2の差で涙をのんだものの、レギュラー陣の実力は他の優勝候補に引けを取らないことは証明済みとも言える。
アーセナルのケガ人の多さは長年指摘されている課題だ。メディカルセンターが2018年に新設された一方で、2023年には長年クラブドクターを務めたギャリー・オドリスコル氏がマンチェスター・Uに引き抜かれるなど、紆余曲折を経た今もなお強固なメディカル体制を確立できている印象は薄い。十分に優勝を狙える実力のある選手たちをいかにバックアップできるか。悲願のタイトルへのヒントはそこに隠されているのかもしれない。
競争力の高いプレミアリーグにおいて、シーズンを通して高いレベルで一貫性をキープすることは容易ではない。その意味で今季のリヴァプールのパフォーマンスは過去数シーズンの中でも傑出したものだったことがわかる。