整った顔立ちと高身長でどこから見てもカッコいい、ナムグン・ミン。イケメンよりあえて“ハンサム”と呼びたい、甘いマスクの持ち主である。今夏、日本を沸かせたのは、ナムグン・ミンがかつて主演した韓国SBSのドラマ『ストーブリーグ』が、亀梨和也主演で日本版リメイクされるというニュースだった。韓ドラ好きにはもちろん知られているナムグン・ミンが、今後より日本でも注目される機会が増えそうだ。
ナムグン・ミンは2002年のデビュー以降、主にドラマにコンスタントに出演し、腕を磨いてきた。その頃の出演作では、2006年のコン・ユ主演のドラマ『ある素敵な日』が印象的。血のつながらない兄妹の禁じられた愛をベースに、男女4人の想いが交差するストーリーなのだが、ヒロインに想いを寄せるナムグン・ミンの役がとことん切ない。今よりもかなり線の細い彼は、この頃はまだ魅力が開花していなかった。
しかし、順調にキャリアを重ねてきたナムグン・ミン。端役での出演から続々と主演作が続く人気俳優へと成長し、今では多彩なジャンルでの活躍ぶりから「演技の神」と呼ばれるほどまでとなった。今回、そんな彼の注目作をあらためて紹介しよう。
新聞社を舞台にメディアの裏側に鋭く切り込む社会派サスペンス。政財界のゴシップを狙う零細ネットメディア・愛国新聞のハン・ムヨン(ナムグン・ミン)が、真実を暴くために奔走。彼は特ダネのためなら法を侵すことも平気な自他ともに認める通称“ゴミ記者”だが、実はかつてメダルを期待された柔道選手でドーピング疑惑により柔道界を追放され、大手の大韓日報の記者だった兄チョロをひき逃げ事故で殺され、犯人を捜すため記者となったのだった。
兄の死に関わる“入れ墨の男”追うムヨンは、人身売買組織のアジトに侵入中、仲間の記者たちが白骨化した遺体を4体発見する。事件と“入れ墨の男”のつながりを怪しむムヨンは、因縁のある担当検事クォン・ソラ(オム・ジウォン)と再会。一方、兄の元同僚記者で、5年前に捏造記事の濡れ衣で左遷されていたイ・ソクミン(ユ・ジュンサン)は、ムヨンと出会い、再び真実を追究するために立ち上がる。
見どころは、初の記者役となるナムグン・ミンが、飄々と見せていながらも実は心に大きな志を持つムヨンの秘めた闘志を絶妙に表現しているところ。そして巨悪に立ち向かっていくムヨンと、数奇な縁でつながっていたソラとソクミンたちが次第に力を合わせ、真実を明らかにするため闘うことだろう。
韓国ドラマでお馴染みのソクミン役ユ・ジュンサンは、ミュージカル界のスターでもあるが、視聴率40%を突破した『棚ぼたのあなた』(2012年)の夫役で「国民の夫」と称されて最近では『悪霊狩猟団: カウンターズ』シリーズ(2020年、2023年)でも親しまれているし、ソラ役オム・ジウォンは『シスターズ』(2022年)の悪役ぶりが強烈だった。そんな実力派たちと共演したナムグン・ミンのスリリングな攻防戦にハラハラするはずだ。
野球経験ゼロのゼネラルマネージャー(GM)が弱小プロ野球チームを再起させるヒューマンドラマ。万年最下位のプロ野球チーム・ドリームズは、チームでの連携が取れず対立したりミスをしたりと問題が山積だった。運営チーム長として働くイ・セヨン(パク・ウンビン)はチームを強くするために奮闘するなか、新たにGMに就任したのは、野球未経験で知識もないペク・スンス(ナムグン・ミン)。スンスは野球は無知だが、実は多くのスポーツチームを優勝に導いてきた実績の持ち主だった。
しかし、彼の手腕に懐疑的なチームメンバーやスタッフたち。セヨンは球団オーナーの甥で常務のクォン・ギョンミン(オ・ジョンセ)の一存でスンスがGMとなったことに不満を抱く。ある日、スンスはドリームズのスター選手であるイム・ドンギュ(チョ・ハンソン)をトレードすると言いだし、チームに激震が走る。さらに自身がトレードされると知って納得しかねるドンギュはスンスに反抗的な態度を見せるようになる。
野球の知識は無いがGMとなって、驚くほどの情報集主力と分析力、そして野球界の慣習に慣れきっていないからこそできる大胆な策を次々と繰り出していくスンスの手腕が鮮やか。セヨンをはじめスタッフやチームメンバーの強烈な反発を喰らいながらも、常に冷静に、チームの優勝を目指して戦略を練っていくスンスをだんだんと周りも理解していくさまに納得だ。
何か裏でたくらんでいそうな常務のギョンミン役は、さすがの名バイプレイヤーであるオ・ジョンセがいい味を出しているし、スンスを訝しみながらもその信念に寄り添うようになるセヨンは『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(2022年)がグローバルヒットしたことも記憶に新しいパク・ウンビンだし、他のキャストも個性豊か。
2020年のSBS演技大賞ではナムグン・ミンが最高賞の大賞を獲得して計4冠を、第56回百想芸術大賞のテレビ部門ドラマ作品賞を受賞するなど数々の受賞に輝き、社会現象となった。野球に詳しくなくても面白い展開に惹き込まれるので観てほしい。
法曹界の変わり者弁護士が社会の不正に立ち向かうリーガルコメディ。罪を犯しても費用の高い弁護士を雇えば罪も消せるような腐った世の中で、お金も後ろ盾もない庶民のために、わずか1000ウォン(日本円で約100円)のみの報酬金で、依頼人のために全力を尽くす実力派弁護士チョン・ジフン(ナムグン・ミン)。法の限界を知り尽くしているからこそ、本当に困っている人たちのために法廷で戦う彼は、まるで正義のヒーローのようだ。
ある裁判で、法曹界のロイヤルファミリー出身の司法官試補ペク・マリ(キム・ジウン)を相手に、あっさりと勝訴したジフン。彼に苦手意識を持つマリだったが、法律事務所代表である祖父のヒョンム(イ・ドクファ)から認めてもらえず、急きょ、住所を書いた紙を渡されてそこで働くように促される。不可解ながらも車を走らせて着いた場所は、なんとジフンの法律事務所だった。
表面上では飄々としていて、一見すると弁護士だとわからないぐらいの派手なスーツにサングラスといった格好のジフンだが、検事時代に起きた悲劇を抱えて弁護士となった奥深さをナムグン・ミンが体現。ジフンがなぜ1000ウォンで依頼を受けるようになったのか、なぜサングラスをかけることとなったのか。その理由はストーリーが進むにつれて明かされていくのだが、ナムグン・ミンの泣きの演技にグッと気持ちを持っていかれるシリアスパートと、あっけらかんとしたコミカルパートのバランスがちょうどいい。
ヒロインのマリ役となるキム・ジウンは、2019年の『ドクタープリズナー』、2021年の『黒い太陽~コードネーム:アムネシア~』に続いて、本作がナムグン・ミンとは三度目の共演ということもあって息が合っている。マリの祖父ヒョンム役のイ・ドクファは、現代劇でも時代劇でも重厚感あふれる存在で、あの渋い声もいいスパイスになっている印象。果たして、正義は勝つことができるのかを見届けたくなる。
激動する時代、幾多の試練を乗り越えて、何度離れても惹かれ合う男女の純愛歴史ロマンス。1636年の春。お嬢様育ちであまり世間のことを知らないヌングン里の両班の娘ユ・ギルチェ(アン・ウンジン)は運命の出会いを夢見ていたが、初恋相手のナム・ヨンジュン(イ・ハクジュ)は親友のキョン・ウネ(イ・ダイン)と恋仲であると知って、自身の想いを持て余すようになっていた。
そんなある日、ギルチェは村を訪れていた謎の男イ・ジャンヒョン(ナムグン・ミン)に出会う。ジャンヒョンはギルチェに興味を持って何かと彼女の前に現れるが、女好きでつかみどころのないように見える彼に何も惹かれないギルチェ。一方、ギルチェと出会ったことで真実の愛を知ったジャンヒョンは、実は武力と交渉術に長けている凄腕。そんな顔は隠したまま、ギルチェへの一途な想いを抱え続けるのだった。
筆者の連載コラム「1000人と婚活したライターがレコメンド!4つの韓ドラ時代劇で学ぶ愛のカタチ」でも本作を紹介しているが、ナムグン・ミンの10年ぶりの時代劇出演作とあって、注目度も高かった。愛するギルチェのために命をかけるジャンヒョンのひたむきな姿や、出会った当初は彼に目もくれなかったギルチェの心が次第にジャンヒョンを強く想うようになるさまに釘付けになる。過酷な時代に愛を貫くふたりの姿は多くの人たちの心を打った。
史実とフィクションを織り交ぜたストーリーである本作は、2023年のMBC演技大賞では大賞など8冠を獲得。第60回百想芸術大賞では男性最優秀演技賞と作品賞の2冠を受賞したほか、数々の賞レースで絶賛されるなど大ヒット。それまでにもナムグン・ミンが出演していれば高視聴率だといわれていたなか、その評価は揺るぎないものとなった。壮大なスケールで描かれた本作は、一見の価値があるだろう。
苦悩多き映画監督と余命宣告を受けた女優が紡ぐヒューマンロマンス。巨匠といわれる映画監督を父に持つイ・ジェハ(ナムグン・ミン)は、父と同じ映画監督の道へと歩んでいた。監督デビュー作は成功を収め、若き天才監督として注目を集めるジェハだったが、公開日に父が亡くなってしまう。同じ映画監督である父の息子だからこその業界やファンからの期待、プレッシャーが重くのしかかり、デビュー作以降は作品を生み出すことができず、約5年ものスランプ状態に陥っていた。
ある夜、コンビニの前で、ハンディカメラを手にした若い女性と出会うジェハ。印象的なやりとりをした彼女は、一度だけでも主役を演じたいという夢を持つ、難病を抱え余命宣告を受けていた女優イ・ダウム(チョン・ヨビン)だった。やがて父の代表作『白い愛』のリメイクを決めた際、主演にダウムを抜擢したジェハ。命のタイムリミットが迫るジェハにすべてをかけるジェハは、映画撮影に取り掛かるも、ダウムの病気が周知され、撮影が困難な状況となる。
ノリに乗っているナムグン・ミンの最新作とあって、話題を呼んだ本作。くすぶっていたジェハは新作に取り組む意欲を取り戻し、さらに本当の愛を知る。暗闇から抜け出してダウムという光を見つけたジェハの心情を、ナムグン・ミンが繊細に丁寧に演じている。ダウム役のチョン・ヨビンはソン・ジュンギと共演の『ヴィンチェンツォ』(2021年)でより知名度を上げたが、本作ではこれまでにないキャラクターを熱演。
人生をどう歩むか立ち止まっていたジェハとダウムが出会い、じっくりと愛を確認し合い、育まれていく絆がじんわりと心に染みわたる。韓国ドラマで余命宣告と聞くと、ダイナミックな展開で大げさすぎるほどのメロドラマになりがちなのではと思う人もいるかもしれないが、本作では刺激的な展開というよりも、むしろ地味にゆっくりと時間が紡がれていく。ジェハのそばにいるスタッフや、ダウムを見守る父や親友や担当医、撮影メンバーらの感情の動きもあたたかい。そして何より、ナムグン・ミンのロマンスにうっとりしてほしい。
どこから見てもパーフェクトなナムグン・ミンの、ヒューマンストーリーからラブロマンスまで、多彩な韓国ドラマを紹介した。次々とヒット作を繰り出していくナムグン・ミンが、さまざまなキャラクターとなって織り成すドラマの世界観をこの機会に味わってみてはどうだろうか。
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