「9歳の頃、自分でクラブを作ってプレーした」チャーリー・ハルのゴルフ選手としての原点 コンディション不良との向き合い方は「あまり自分を追い詰めすぎない」|AIG女子オープン(全英女子)
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「9歳の頃、自分でクラブを作ってプレーした」チャーリー・ハルのゴルフ選手としての原点 コンディション不良との向き合い方は「あまり自分を追い詰めすぎない」|AIG女子オープン(全英女子)

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今季メジャー最終戦となる『2025 AIG女子オープン(全英女子)』が、2025年7月31日(木)にウェールズのロイヤル・ポースコールGCで開幕した。日本勢が17人出場していることでも注目を集める同大会。すでに初日がスタートし、岡山絵里と竹田麗央が首位タイにつけているが、ここではチャーリー・ハル(イギリス)が開幕を翌日に控えた記者会見で語った、ゴルフに対する価値観や体調不良との向き合い方、メジャーへ挑む際に大切にする姿勢などを、日本語でお届けする。

「かつてのゴルフは、もっと“アート”だったと思う」

──水曜日にもかかわらず、コースの外ではサインやセルフィーを求める多くのファンに囲まれていましたね。すでに素晴らしい雰囲気ですが、あなた自身はどう感じていますか?

チャーリー・ハル:ええ、とても良い感じです。 やはりイギリスに戻ってこられて嬉しいですし、これだけ多くの人がゴルフを応援しに来てくれるのは素晴らしいことですね。

──コース外での活躍で言えば、あなたの人気はますます高まっています。今週、映画『Happy Gilmore 2』への出演が発表されましたが、撮影はいかがでしたか?

チャーリー・ハル:かなり長い一日でした。 でも正直なところ、とても楽しかったです。アダム・サンドラーに会えたのは最高でしたね。 本当にクールな経験でした。子どもの頃に1作目を見て育ったので、自分が映画に出るなんて想像もしていませんでした。 

でも、ひとつだけ確信したことがあります。私、絶対に女優にはなれないなって(笑)。 あのワンシーンを撮るだけで丸一日かかったんです。どうしてあんなに我慢強くいられるのか、私にはわかりません。

──さて、今回のコースについてお伺いします。LPGAやLETにとっては比較的新しいコースですが、プレーしてみた印象はどうですか?

チャーリー・ハル:素晴らしいゴルフコースだと思います。 実は2011年のジュニア・ヴァグリアーノ・トロフィーで、ここでプレーしたことがあるんです。 GB&I(グレートブリテン&アイルランド)代表として、ジョージア・ホールと一緒に出場しました。当時はいつも二人一緒で、離れられない仲でしたね。

フォアサムでもペアを組んだのですが、練習ラウンドでの面白い思い出があります。私は練習ではいつもオレンジのドットが3つ入った3番のボールを使うのですが、試合用のボールは同じマーキングの1番なんです。 フォアサムの3番ホールで、私がティーショットを右に曲げてしまって。実はその前日の練習ラウンドでも同じ場所に打ち込んでいたんです。

それで、ジョージアがボールの所に行くと、ボールに3つのドットが見えたので、そのままグリーンに乗せました。 私がグリーンに上がっていくと、ホールを獲るためのパットが残っている状況。でも、ボールを拾い上げた瞬間に気づいたんです。「ジョージア、これ3番だよ。私たちのボールは1番のはず」って。 彼女は「でもチャーリー、あなたのマークが入ってるわよ」と。私は「うん、それは昨日私が練習ラウンドで無くしたボールだ」と返しました(笑)。 あっけなくそのホールを失いましたね。

──面白い思い出ですね(笑)。

チャーリー・ハル:ええ、かなり面白い出来事でした。 でも、そんなわけでこのコースには良い思い出がありますし、誰もが訪れるのに素晴らしい場所だと思います。 コースは最高ですし、今年の1月にもナイジェル・エドワーズと一緒にここでプレーして、彼に助けてもらいました。本当に素晴らしい時間でしたね。

──コースを見ると、フェアウェイにはティーショットで捕まりそうな、厄介なポットバンカーがたくさんあるように見えます。今週のティーショットの戦略は?

チャーリー・ハル:普段の私はバンカープレーがとても得意なんです。 でも、ここのバンカーは非常にペナルティ性が高いので、とにかく出すだけになってしまいます。 それがこのゴルフコースの最大の防御策ですね。 もし風が吹けば、非常にトリッキーになると思います。

全英女子

──現在の体調はいかがですか?100%の状態に戻りましたか?

チャーリー・ハル:ええ、日曜日の時点では、ほぼ普段通りに戻ったと感じています。 回復に3週間かかりました。 正直、かなりもどかしかったです。ジムにも行けなかったので。 昨日ようやくランニングをしたくらいです。その前の週は体調を崩していて、さらに車から箱を降ろす時に背中を痛めてしまって…。

背中の痛みがひどくて、ショットにも影響が出ていました。リハビリのエクササイズをするためにジムに行けなかったのが原因です。 だから、今週に向けてショットは最高の状態とは言えません。一年で一番楽しみにしていた大会なだけに、本当に悔しいです。

でも、自分にあるもので戦うしかありません。 結局のところ、これはただのゴルフゲームですし、楽しむことを忘れてはいけない。 あまり自分を追い詰めすぎないようにしようと思っています。

──コース戦略に話を戻しますが、ドライバーはバッグに入れていますか?

チャーリー・ハル:ええ、ドライバーは入っています。もちろん使いますよ。 ただ、最近体調を崩してジムに行けていなかったせいで、少し飛距離が落ちたと感じています。 トラックマンで計測したら、スイングスピードがおそらく時速8マイルくらい落ちていました。

それでも、自分のスイングの感覚を取り戻して、自信を持ってプレーするだけです。 バッグには新しいレスキューウッドを入れました。ロフトが多めのものです。 3番ウッドを抜いて、レスキューウッドを2本入れています。 ただ、3番ウッドを入れるか、長めのレスキューにするかは、もう少し話して決めるつもりです。 自分のフィーリング次第ですね。

とにかく、ボールをインプレーに保ち、我慢強くプレーすることが重要です。 ここでは風がどうなるか予測できません。正直、優勝スコアがいくつになるかはまだ見当もつきません。 皆さんはどう思いますか?誰もわからない?

──昨晩、ジョギングをされているのを見かけました。体調が良くなってきた証拠ですね。

チャーリー・ハル:ええ、100%良くなっています。 先週一度走ってみたんですが、その後あまり気分が良くなくて(笑)。 それで学んだんですが、昨日は走りたくなったんです。背中は少し痛むのですが、フィジオ(理学療法士)に「歩いたり動き続けたりしなさい」と言われていたので。 彼は「走れ」とは言っていませんでしたが、私は走りたかったんです。 走ってみたら大丈夫でした。ここの景色は本当に美しいですし、とても気持ちのいい場所ですね。

今振り返ると、以前は本当にたくさんの運動をしていたんだなと。 当時はすごく体力があったんでしょうね。この3週間で4キロも体重が落ちてしまいました。かなりの減量です(笑)。

──あなたは、全員がブレードアイアンのような昔のクラブでプレーする方がいいと常々言っていますね。もしそうなっていたら、今頃メジャーで勝っていたかもしれません。ヒッコリーシャフトのような古いクラブで実際にプレーしたことはありますか?

チャーリー・ハル:ええ、ありますよ。 9歳の頃、コーチと一緒にクラブを自作したんです。 糸を巻いて、ニスを塗って、やすりをかけて…全部自分たちでやりました。 それで実際にコースに出てプレーしたんですが、すごく楽しかったです。 そういうのをイベントとしてやるのも面白そうですよね。

チャーリー・ハル 1

──1860年代後半に、フェザーボール(羽毛を詰めたボール)でゴルフをしている自分を想像できますか?

チャーリー・ハル:ぜひやってみたいです。すごく楽しいでしょうね。 正直に言うと、20〜30年前、例えば2000年代くらいまでのゴルフは、もっと“アート”だったと思うんです。 男子選手でさえ、ドローやフェードを打ち分けてボールを止めなければなりませんでした。

でも今は、テクノロジーが進化しすぎて、パワーゲームになっています。誰もが遠くに真っすぐ飛ばせるようになったことで、ゴルフからアートの部分が失われてしまったように感じます。

私はゴルフを見るとき、「シェルズ・ワンダフル・ワールド・オブ・ゴルフ」や、1970年代の全英オープンの勝者についての番組なんかを見るんです。 当時の方がずっと面白かったと感じますね。正直、今のゴルフはあまり見ません。

「私はただ、私自身でいるだけ」

──このコースで前回大きなトーナメント(シニアオープン)が開催された際、ひどい悪天候だったことはご存知ですか?

チャーリー・ハル:ええ。確か3年前でしたっけ? ああ、2年前ですか。LPGAのキャディの一人が、そのシニアの大会でもキャディをしていて、選手たちがずぶ濡れになったと言っていたのを覚えています。 だから、今週は私たちが太陽を連れてきたことを願っています(笑)。

──先ほどお話しされたように、今大会への準備期間は理想的とは言えませんでした。しかし、逆にそれがポジティブに働くこともあるのではないでしょうか?好調なまま臨むと、この重要な大会への気負いが大きくなりすぎる可能性もあります。

チャーリー・ハル:その考えは理解できます。でも、ここ2年ほどの私は、まるでオートパイロットのような状態でした。ショットの調子が悪くても、思い切って振っていけるだけの自信があったんです。 今大会に至るまでも、全米女子オープンと全米女子プロで12位という成績でした。 その後、先週は復帰して21位でしたが、エビアン選手権は欠場せざるを得ませんでした。

本当に悔しいです。だって、シーズンのこの時期はとても重要で、一年で一番楽しみにしていた時期なんですから。「ちくしょう」って感じです。 でも結局のところ、最初の数ホールでバーディーがいくつか来れば、すぐに自信を取り戻せると思います。 「怪我をしたゴルファーに気をつけろ」という言葉があるのはわかりますが、今は体調も良いので、この2日間の練習が実を結ぶことを願っています。

──あなたのゴルフはメジャー選手権に非常に合っているように見えます。メジャータイトルへの渇望はどれほど強いですか?

チャーリー・ハル:ええ、100%、メジャーで勝ちたいです。 でも、正直に言うと、リンクスコースでの全英オープンは、自分に一番合っているとは思っていません。 だからいつも全米女子オープンなどの方が良いプレーができると感じてしまうんです。その考えは頭から追い出さないといけませんね。 ウォルトン・ヒースやウォーバーンのようなコースで開催されたときは、自分のゴルフにずっと合っていると感じます。

これは、ティーショットでの視覚的な問題が大きいんです。リンクスコースは、どうも威圧的に感じてしまって。 でも、KPMG(女子PGA選手権)が開催されたサハリーは、世界で最もタイトなコースの一つでしたが、私は世界で一番広く感じました。なぜなら、私は林に囲まれている方が好きだからです。わかりますか?私にとっては、本当に視覚的なものが大きいんです。

──AIG女子オープンは素晴らしい大会になり、選手への施設も年々向上しています。今年はサウナやジムもあると聞きましたが、選手として最もありがたいと感じる設備は何ですか?

チャーリー・ハル:ええ、本当にその通りです。毎年レベルアップしていて、私たちのためにしてくれることは本当に素晴らしいと思います。 たとえば食事です。とても健康的な食事が提供されています。 結局のところ、私たちはスポーツ選手、アスリートです。 ここで提供される食事は、ハンバーガーやポテトのようなものではなく、私たちの体にエネルギーを供給するための適切な食事です。 もちろん、ハンバーガーやポテトは誰もが好きですけど、これはとても重要なことです。

それに、ゴルフコースにジムがあることも大きい。特にイギリスでは、まともなジムがあるホテルは珍しいですから。 その点でも私たちをしっかりケアしてくれますし、施設内のすべてにおいて、この分野ではこのメジャーが断トツで最高だと思います。 

全英女子

──今大会のヘッドラインはロティ・ウォード選手の話題で持ちきりです。「それも素晴らしいけれど、この数日間で私が何ができるかを皆に思い出させたい」という気持ちはありますか?

チャーリー・ハル:聞いてください、ロティ・ウォードが成し遂げたことは、本当に信じられないほど素晴らしいことです。 アイルランドでの練習ラウンドでも、先週の最初の2日間も彼女と一緒にプレーしました。 今の彼女は、とてつもない自信を持ってプレーしています。 まったくミスをしませんし、見ていて本当に素晴らしい。 彼女はゴルフ界にとって新鮮な風のような存在です。

もちろん、私もトーナメントで勝ちたいですし、人々が「チャーリー・ハルはまだここにいる」と言うことなんて気にしません。だって、私は実際に“まだここにいる”のですから。 私はコースに出て楽しんでいます。でも、ロティが成し遂げたことについては、本当に誇りに思います。鳥肌が立つような話ですよ。

──自分の名前が再びヘッドラインを飾るのを見たいと思うのは、人情というものでは?

チャーリー・ハル:ええ。でも、私が見たいのはトロフィーに刻まれた自分の名前です。 ヘッドラインを飾ることには興味がありません。そもそも見出しなんてほとんど読みませんから(笑)。私はただコースに出て、ゴルフをして、良いプレーをする。そして、願わくばトロフィーに自分の名前を刻みたい。それだけです。

──サッカーのイングランド女子代表が欧州選手権で優勝しましたが、特にイギリスで今起きている女子スポーツの大きなムーブメントの一部であると感じますか?また、その中でご自身の役割をどう考えていますか?

チャーリー・ハル:イングランド女子チームが成し遂げたことは、信じられないほど素晴らしいと思います。 スポーツ全般にとって、本当に素晴らしいことです。 朝起きて、大好きなゲームをして、それでお金を稼げるなんて。 なんて素晴らしい人生でしょう?そう思いませんか?健康で、体力もある。 学校にいる子どもたちには、ぜひスポーツに取り組むことを勧めたいです。 ものすごく上手くなる必要はなくても、スポーツは素晴らしいものだと思います。

私自身が何かを背負っているとは感じていません。私はただ、私自身でいるだけです。 ああいうスポーツイベントや、この大会のようなイベントが、女性や女の子、子どもたち、いや、すべての人々の背中を押してくれるのだと思います。 本当にクールなことですね。

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