今季メジャー最終戦となる『2025 AIG女子オープン(全英女子)』が、2025年7月31日(木)にウェールズのロイヤル・ポースコールGCで開幕を迎える。日本勢が17人出場することでも注目を集める同大会。初日が迫るなか、前回大会を制したリディア・コが記者会見で、連覇を目指す心境を言葉にした。
「創造性が求められる。忍耐強く、風をうまく利用できれば良い一週間を送れる」
──ディフェンディングチャンピオンとして、再び全英女子オープンへようこそ。昨年の特別な思い出を胸に、大会に臨む気持ちはいかがですか?
リディア・コ:自分がこの大会のディフェンディングチャンピオンだと聞くのは、なんだか不思議な感じがしますね。昨年のセント・アンドリュースでのことは、もちろん素晴らしい思い出です。あれからもう1年が経つなんて信じられません。
とてもワクワクしています。私にとってウェールズは初めて訪れる場所なので、まずはこの地に慣れて、少し文化を学ぼうとしているところです。とても楽しいですし、今週の結果がどうであれ、ディフェンディングチャンピオンとしてプレーできることは素晴らしい経験になると思っています。
──今大会はウェールズでの初開催となりますが、現地の盛り上がりは感じますか?
リディア・コ:ええ。これはウェールズで開催される最大の女子スポーツイベントだと聞いています。ですから、たくさんの観客が足を運んでくれることを期待しています。以前このコースで選手権が開催されたのは、男子のシニアオープンだったそうですね。その時は天候がかなり荒れていたと聞きました。今週はもう少し良い天気が予報されているので、たくさんのギャラリーに来ていただけると嬉しいです。
観客の皆さんの存在が、この大会の最も素晴らしい点の一つだと思うんです。いつも観戦に来てくださる方々は、本当にゴルフを愛していて、情熱にあふれています。雨が降ろうが、時速30マイルの風が吹こうが、私たちと一緒にいてくれる。初開催ということで、多くの注目が集まることを願っています。
──昨年のこの時期の自分のゴルフを振り返って、今取り戻したいと感じるものは何ですか?
リディア・コ:まず、パリ(五輪)での1週間は、「素晴らしい」という言葉では足りないくらいでした。ただ、(セント・アンドリュースを訪れる)その前に金メダルを獲得し、殿堂入りも果たしていたので、自分に対する期待は少し薄れていたんです。純粋にセント・アンドリュースに戻ってこられたことが嬉しかったですね。
家族やチームもたくさん来ていて、地元のレストランに行ったりもしました。もちろんゴルフも重要でしたが、どちらかと言えば二の次でした。そんな中で、私のキャリアにおける、そして人生における最高の週のひとつが訪れたのです。自分の心の中では、優勝する可能性は限りなく低いと思っていました。
特に最初の2日間は、風が強くて難しいコンディションでした。でも、私にとってはただ楽しかったんです。完璧なショットを打とうとするよりも、もっとオープンな気持ちで、ただ自由にプレーしようと心がけていました。
リンクスコースでは、それが本当に重要だと思います。会心のショットを打ってもピンからすごく離れてしまうこともあれば、その逆もある。だからこそ、創造性がより求められます。今週も、そうした姿勢で臨みたいですね。忍耐強く、風をうまく利用できる選手が、良い一週間を送れるのではないでしょうか。
──ロティ・ウォードは、若くして早くから成功を収めています。同じような経験を持つ者として、キャリアの初期段階を乗り越えるためのアドバイスはありますか?
リディア・コ:ロティやローズ(・チャン)は、プロとして、そしてLPGAツアーで、最初のトーナメントに優勝しましたよね。ローズは素晴らしいキャリアを歩んでいますし、ロティも非常にホットなスタートを切りました。(ロティは)先週の優勝だけでなく、その前のエビアン選手権でトップ5に入り、アイルランド女子オープンでも優勝するなど、信じられないようなプレーを続けています。
ロティのゴルフを個人的に深く知っているわけではありませんが、少し見ただけでも非常に印象的です。クールで、落ち着いていて、冷静な立ち居振る舞い。それはプレーヤーとして非常に重要な資質だと思います。彼女は勢いよく頭角を現しましたが、これからもきっと素晴らしいプレーを続けるでしょうね。
──若くして注目を浴びるという点について、もう少し。スポットライトの中心にいる時、最も大きな挑戦は何でしたか?
リディア・コ:ロティは私がツアーに参戦した時よりも年上ですし、大学ゴルフも2、3年経験しているので、少し状況は違うと思います。ですから、彼女はそういった厳しい瞬間を何度も乗り越えてきているはずです。もちろん、アマチュアとして大学でプレーするのとプロとしてプレーするのは違いますが、彼女はどんな環境でもプレッシャーのかかる状況で素晴らしい結果を残してきました。おそらく人々が評価する以上に、多くの経験を積んでいると思います。
メディアの報道や彼女自身の立ち居振る舞いを見ていても、物事に焦ったり、感情的になったりするようには見えません。その落ち着きが、プロへの移行を助けているのは間違いないでしょう。そして、彼女の成功を見ればわかるように、その背景には素晴らしいチームの存在があります。きっと彼女にも、そうした大事な場面で導いてくれる人々がいるのだと思います。
──昨年のセント・アンドリュースでの優勝に話を戻します。当時の状況や天候を考えると、あの最終ラウンドはご自身のキャリアの中で、どれくらい高いレベルのプレーでしたか? 最高のラウンドの一つ、あるいは史上最高でしたか?
リディア・コ:最も安定したラウンドの一つでした。ただ、全英女子オープンを他のメジャー大会と比較するのは非常に難しいです。私たちが向き合う自然の要素が、全米女子オープンやアメリカ国内の試合とはまったく異なりますから。リンクスコースでのゴルフは、それ自体が特殊なゴルフです。ここでの時速20マイルの風は、フロリダでの同じ風速とはまったく意味が違います。
そういう意味では、あの瞬間、あの状況にうまく対処できたのだと思います。でも、実は16番ホールでリーダーボードを見るまで、自分が首位タイだとは気づいていませんでした。自分ではトップ10のどこかにいて、力強いフィニッシュをして、最終的にどうなるか見てみよう、くらいに思っていたんです。優勝争いをしているとは考えてもいませんでした。
だからこそ、より自由に、自分のゲームプランに徹してプレーできたのかもしれません。もしもっと頻繁にリーダーボードを見ていたら、コースマネジメントも変わっていた可能性があります。でも、あの時はラウンドの90%で自分の状況を把握していなかったので、目の前の一打に集中できました。そのおかげで、他のことを気にせず、非常に安定したプレーができたのだと思います。
ですから、あれが最高のラウンドだったかというのは難しいですね。全英女子オープンであのようなポジションにいたこともなかったので、比較すること自体が難しいです。
「『勝てること』を誰かに証明する必要はない」
──昨年は期待値が低い中で大会に入ったと話していましたが、今年はディフェンディングチャンピオンとして、そのプレッシャーは蘇ってきましたか?
リディア・コ:ディフェンディングチャンピオンだからといって、プレッシャーが増すことはありません。結局のところ、一度優勝すれば、その事実は誰にも奪えないものですから。「AIG女子オープンで勝てる」ということを、誰かに証明する必要はありません。その意味で、今週何が起きるかだけに集中し、自由にプレーできると思っています。
この大会の素晴らしい点であり、同時に難しい点は、毎年新しいゴルフコースでプレーすることです。私が2度プレーしたことがあるのは、セント・アンドリュースとウォーバーンくらい。新しいコースに来ると、ここでプレーした経験のある選手はほとんどいないので、誰もが白紙の状態からスタートします。誰も有利な立場にはいません。
ですから、まずはコースに慣れることが重要です。しかも、ここは私が過去にプレーしたリンクスコースとは、また少し違うタイプ。挑戦になるでしょうね。ディフェンディングチャンピオンであろうと、予選会を勝ち上がってきた選手であろうと、誰にとってもタフな一週間になると思います。
でも、穏やかな天候よりは、タフな方がいいです。晴天はもちろん大好きですが(笑)、全英女子オープンに来るからには、雨や風を期待しています。それこそが、この大会を心から楽しめるようになった理由です。だから、あらゆる要素が揃ってくれるといいですね。男子シニアの時ほどクレイジーでなくてもいいですが(笑)。きっと色々な天候を経験することになるでしょうし、そこがまた好きなところです。
──ウェールズに来る前は、この場所について何を知っていましたか?
リディア・コ:国旗以外で知っていたのは、母音がほとんどない単語があることくらいです。子音がたくさん並んでいるように見える言葉ですよね。昨日会った人から、発音はフランス語とスペイン語に少し似ていると聞きました。今まで聞いた中で最も難しい言語の一つかもしれません(笑)。
それから、ウェールズには羊がたくさんいると聞きました。ニュージーランドも羊で有名なので、どこか故郷のように感じます。人々はとても温かく迎えてくれますね。私たちがいるのはウェールズの南部なので、この地域ではウェールズ語を話す人は少ないそうです。ですから、まだウェールズの文化にどっぷり浸かったわけではありませんが、とても気に入っています。
素敵な場所に滞在していますし、できる限り楽しみたいと思っています。自信を持って知っていると言えるのは、国旗と、トリッシュ・ジョンソンやリディア・ホールといったウェールズ出身の選手くらいですね(笑)。
──木曜日と金曜日のペアリングをご覧になりましたか? ロティ・ウォードと一緒の組ですが、彼女のプレーを間近で見ることについてどう思いますか?
リディア・コ:はい、ここに来る途中、歩いている最中に組み合わせを見ました。リリー(リリア・ヴ)、ロティ、そして私、トリプル「L」のグループですね。楽しくなりそうです。リリアは数年前のチャンピオンですし、彼女とのプレーは素晴らしい経験になります。そして、ロティとプレーするのは初めてなので、とても楽しみにしています。
ロティは最高の勢いでこの大会に乗り込んできますし、多くのギャラリーが彼女を見に来るでしょう。それを間近で見られるのは、私にとっても本当にクールなことです。彼女から学べることや、彼女がなぜ良いプレーを続けているのかを知るチャンスです。ランキングが高いからといって、他の誰かから何も学べないということはありません。彼女は明らかに素晴らしいゴルフをしています。
彼女のスイングは見たことがありますし、コーチからも彼女のスイング動画が送られてきたことがあります。私が目指している要素を彼女が持っているからです。ですから、ロープの内側で一緒にプレーして、少し彼女の考えを聞いたりできるのは、本当に素晴らしいことだと思います。最高のグループですし、最高の2日間になるはずです。