トレーニング直後、ロンドン市内の日本食レストランに現れたドミニク・ソランケ。日本文化を愛する彼は、慣れた手つきでお箸を操る。ユニークなゴールセレブレーションの源泉でもあるという、深いアニメ愛。聞けばただ好きなだけではなく、選手としてのメンタリティにも大きく影響しているという。ピッチ上での獰猛さとは異なる穏やかな表情で取材に応じる、ストライカーの意外な素顔に迫る。
「最初に見たのは『NARUTO -ナルト-』」。アニメ愛から始まった、日本文化への関心
──本日はお越しいただきありがとうございます。素敵な日本食レストランですが、トレーニングの直後ですか?
ソランケ:ええ、ちょうど終わったところです。
──まず、目の前のお料理からいただきましょうか。ハマチのお刺身と枝豆です。お箸は使えますか?
ソランケ:もちろんです。あなたは?(笑)
──挑戦してみます(笑)。でも、カメラの前でこぼさないか心配です。
ソランケ:僕もタレを垂らしたくないので、慎重にいかないと。(一口食べて)んー、美味しいです。
──とても美味しいですね。さて、私たちがこの日本食レストランにいるのには理由があります。あなたが日本とその文化をとても愛していると伺いました。
ソランケ:はい、そのとおりです。日本が大好きで、文化も大好きなんです。2023年に初めて訪れたのですが、また行きたくてたまりません。
──インスタグラムで拝見しました。初めての日本はいかがでしたか?
ソランケ:数年前からずっと行こうとしていたのですが、なかなかタイミングが合わなくて。12日間滞在したのですが、朝から晩まで休みなく探検し続けても、やりたいことのすべてはできませんでした。本当にやることが多くて、文化も素晴らしい。間違いなくまた行きます。
──奈良の鹿がお辞儀をしている投稿は印象的でした。
ソランケ:そうなんです(笑)。TikTokで見て、完璧な場所だと思って朝一番で行ったら、鹿たちがすごくお腹を空かせていたみたいで、どこまでも追いかけてきました。Tシャツを噛まれたりして、かなりアグレッシブでしたよ。面白い体験でした。
──そもそも、日本への愛はどこから始まったのですか?
ソランケ:アニメからだと思います。アニメの中には、実際の日本の街並みが描かれていることがあって興味深かったんです。でも実際に行ってみたら、アニメのことだけが頭にあるわけではなく、文化全体を受け入れることができた。それくらい素晴らしかったです。本当に大好きな場所になりました。
──アニメはイギリスではまだニッチな趣味かもしれませんが、何がきっかけでハマったのですか?
ソランケ:友人を通じてです。何人かに数ヶ月間ずっと「見ろ、見ろ」と勧められていたのですが、ずっと断っていました。今、僕が他の人に勧めると「興味ない」と言われるのと同じですね(笑)。
でも、一度試してみたら、もう夢中になってしまって。最初に見たのが『NARUTO -ナルト-』で、とても長い作品の一つなので、よく見終わったなと思います。でも、それくらいすぐに中毒になりました。それ以来、毎日たくさんのことをアニメから学んでいますし、僕にとって情熱を注げるものなんです。
アニメから学ぶ「諦めない心」とゴールセレブレーションの裏側
──あなたをそこまで惹きつけたアニメの魅力とは何だったのでしょうか?
ソランケ:キャラクターの成長ですね。『NARUTO -ナルト-』は、忍者の世界にいる少年が主人公です。最初は誰からも好かれず、多くの困難を経験するのですが、最高の忍者になるために奮闘する。その旅路を追いかけていると、彼が目標を達成できるように心から応援したくなるんです。何も持っていなかった人や、弱かった人が最強になっていく物語が大好きなんです。
──いわゆるアンダードッグ的な精神性に惹かれるのですね。その想いが、今やあなたの代名詞となったゴールセレブレーションに繋がっているわけですね。
ソランケ:はい。最初にやったのはウォルヴァーハンプトン戦での、『ONE PIECE』のトラファルガー・ローのポーズです。
──なぜ彼を選んだのですか?『ONE PIECE』は1200話近くあると聞きますが…。
ソランケ:ええ、全部見ました。とても長いですが(笑)。当時ちょうど見ていて、ローはシリーズの中でもお気に入りのキャラクターの一人なんです。彼の象徴的な動きをサッカーとアニメを融合させて表現してみよう、と友人と話して決めました。
──反響は大きかったですか?
ソランケ:ものすごかったですね。たくさんのメッセージをもらいました。正直、これを始めるまでアニメのファンがこれほど多いとは知りませんでした。多くの人がアニメを愛していると実感できて、信じられない気持ちでした。それ以来、セレブレーションが僕の定番になりました。サッカー以外の共通点で人々とつながれるのは、本当に嬉しいことです。
(ここでチキン餃子が運ばれてくる)
──次の料理が来ましたね。餃子です。
ソランケ:うわあ、美味しそう。ディップして…いただきます。うん、美味しいです。気に入りました。
──チームメイトもあなたのアニメ好きを知っているのですか?
ソランケ:ええ、何人かは少し見たことがあるようです。最初は僕が本当に全部見ているのか、ただセレブレーションをやっているだけなのか半信半疑だったみたいですが…。今、ジェームズ・マディソンを引き込もうと頑張っているところです。彼はいつも僕が見ているのを隣で見ていますからね。
──面白いですね。では、もしチームメイトを『進撃の巨人』の巨人に例えるとしたら?「鎧」「獣」「進撃」の3タイプでは誰になりますか?
ソランケ:「鎧の巨人」は賢くて戦略的なキャラクターなので、マダーズ(マディソン)かな。ピッチ上での彼は本当にクレバーですから。「獣の巨人」は、間違いなくロメロですね。彼は正直、獣みたいですから(笑)。すごくアグレッシブで強い。「進撃の巨人」は…主人公ですし、ソニー(ソン・フンミン)でしょう。キャプテンでリーダー、そしてもちろん偉大な選手です。
──あなたのキャリアにも、アニメの物語と重なる部分はありますか?「決して諦めない」という姿勢など。
ソランケ:ええ、もちろんです。先ほど話したキャラクターの成長と同じように、僕も大きなクラブでキャリアを始め、一度リーグを降格し、そこから再び這い上がってきました。もちろんサッカーはアニメとは違いますが、キャラクターたちのマインドセットは参考にできます。
ソランケ:彼らの多くが、困難や挫折を乗り越えて頂点に立つ。その姿はいつも僕の心の中にあります。ジムでもう一回頑張らないといけない時、オフシーズンで自分を追い込む時、彼らの姿が頭の片隅にあって、僕にもう一押しを与えてくれるんです。
──ボーンマスでの最後のセレブレーションは、ブレントフォード戦でのマスクでしたね。
ソランケ:あれは『NARUTO -ナルト-』のマスクで、Amazonで注文したものです(笑)。面白い話があって、実はその前にも一度ゴールを決めてマスクで祝ったのですが、VARで取り消されてしまったんです。ゴールにもならないのにマスクで祝って、ちょっと恥ずかしいじゃないですか。だから、頭の中は「もう一度決めないと、このままじゃ終われない」ということだけでした。ありがたいことに、また決めることができて、無事にセレブレーションをやり直せました。
──トッテナム・ホットスパーへの移籍が決まったとき、アニメにインスパイアされた加入発表ビデオは素晴らしかったです。
ソランケ:僕も大好きです。クラブがそこまで考えて準備してくれていたことに驚きましたし、感動しました。
──ハリー・ケインという偉大なストライカーの後継者として、プレッシャーは感じていますか?
ソランケ:もちろん、ハリーはクラブのために信じられないことを成し遂げたワールドクラスの選手です。でも、今では彼のプレースタイルをチームに浸透させようとしていて、それに合った選手をクラブも求めています。その姿勢は僕の心にも強く響きました。それが今、このクラブに必要なことであり、僕たちが目指していることですから。
──最後に、私たちからプレゼントがあります。
ソランケ:うわあ、大きいですね!
(プレゼントを開けるソランケ)
ワオ!これはヤバい。すごいですね!ありがとうございます。
──あなたをアニメキャラクター風に描いたアートです。
ソランケ:彼は何かヤバいことをしでかそうとしているように見えますね(笑)。炎もあって、険しい顔で、戦いの準備ができている。これは家の壁の一番良い場所に飾らないと。廊下のどこかに。本当にありがとうございます!