世界最高峰の総合格闘技(MMA)団体として、世界最高のMMAアスリートが名を連ねるUFC。U-NEXTがライブ配信した2025年8月10日(日本時間)開催の『UFCファイトナイト・ラスベガス109:ドリッゼ vs. ヘルナンデス』(UFC APEX)では、ミドル級9位のロマン・ドリッゼ(ジョージア)と、同級10位のアンソニー・ヘルナンデス(アメリカ)が、メインイベントで対戦した。
試合は「4R 2:45 サブミッション」でヘルナンデスが勝利。この記事では、試合後会見でヘルナンデスが自らの言葉で語った心境や想いをお届けする。
■試合レポート
第1ラウンドから、互いの持てるスキルを総動員した激しい攻防が繰り広げられた。第2ラウンドから第4ラウンドにかけては、ヘルナンデスがアグレッシブに試合の主導権を握っていく。強力なパンチを的確にヒットさせ、グラウンドではドリッゼを圧倒した。その後も着実にドリッゼを消耗させたヘルナンデス。最後はリアネイキッドチョークでタップアウトを奪い、試合後にこう語った。
「今回は、俺の打撃、柔術、そしてレスリング、そのすべてを見せつけたかった。タイトルショットが欲しい。俺はあと何をすればいい? 毎日、自分を限界まで追い込んでいる。子供の頃からずっとこうしてきたんだ。俺が知っているのは暴力と戦争だけだ。俺にタイトルショットをくれ。そうすれば、俺が次のチャンピオンになることを約束する」
「俺が誰かの言うことを聞くとしたら、それは俺の仲間だけだ」
──圧勝という言葉ですら、今夜のあなたのパフォーマンスを表現するには物足りないかもしれません。これ以上ないほど見事な内容でしたが、ご自身の試合を振り返ってみて、今どのようなお気持ちですか?
ヘルナンデス:気分はいいよ。目の上のクソみたいなカットは最悪だけどな。でも、大丈夫だ。俺がお前らに言った通りのことが起きただけさ。
──このパフォーマンスは、ミドル級戦線や世界中のファンに向けた強烈なメッセージになったのではないでしょうか?
ヘルナンデス:ああ、そのつもりだった。前のブレンダン・アレンとの試合は、怪我もしてたし、病気でもあったんだ。おまけに減量もきつくてな。あの試合は何もかもうまくいかなかったんだ。それでもあいつを倒したけど、パフォーマンスには満足できなかった。勝ちはしたけど、あれは本当の俺じゃなかったのさ。
だから今回は、俺が何でもできるってことを見せてやりたかったんだよ。相手を完封することも、プレッシャーをかけて下がらせることもできる。お前がどれだけ危険なファイターだって言われてようが関係ない。俺はお前を追い詰めて、ボコボコにしてやるってね。
──試合の早い段階で、相手の力量を見切ったように見えました。「こいつのリズムは読めた。俺の方が速い」と。いつ頃から「今夜は俺の日になる」と確信しましたか?
ヘルナンデス:あいつのパンチがどれだけ遅いか、一番強いパンチを食らった瞬間にすぐ分かったね。みんなに言ってきた通り、俺はキックボクサーなんだ。立ち技にはめちゃくちゃ自信がある。レスリングを学んできたのは、相手の心を折るためさ。
俺のチームにはゲームプランがある。戦略を授けてくれて、俺はコーチたちの言うことを聞く。だって、あいつらが俺をここまで導いてくれたんだからな。これはチームの努力の結果なんだ。俺一人の手柄じゃない。あのベルトは、チームみんなで獲るべきものだと思ってる。みんな、そのために努力を積み重ねてるんだ。
──今夜のように、ゲームプランに徹し続けるのは大変でしたか? もっと早くフィニッシュしたいという気持ちもあったかと思いますが。
ヘルナンデス:一度頭に血が上って、相手に向かって歩きながら「来いよ、ビビってんのか」って汚い言葉を吐いた時があった。でも、コーチたちが「おい、落ち着け!」って叫んでるのが聞こえたんだ(笑)。それで「はいはい、分かったよ」って冷静になれたのさ。
でも、これが試合ってもんだろ?時には色々起きるし、俺はカッとなりやすい性格なんだ。コーチたちは俺のことをよく分かってて、どうすれば俺を落ち着かせられるかも知ってる。俺が誰かの言うことを聞くとしたら、それは俺の仲間だけだ。
──第2ラウンド終了時、多くの人が試合は終わったと思ったでしょうし、あなた自身もそう思ったように見えました。
ヘルナンデス:ああ、俺も終わったと思ったよ。でも、終了のブザーは聞こえなかったから、仕方ない。でも言ったろ?必要なら10ラウンドだって戦える準備はできてるってな。
──一度フィニッシュしたと思って歓喜した直後に、「まだ戦わないといけない」と気持ちを切り替えるのは難しくありませんでしたか?
ヘルナンデス:いや、別に。言った通り、誰かを25分間痛めつけ続けるなんて、俺にとっては朝飯前さ。
──フィニッシュについてお聞きします。記録上はリアネイキッドチョークですが、あれは単なる絞め技ではありませんでした。まるで相手の首をつかんで、ケージ中を引きずり回しているようでした。あの瞬間、何を考えていましたか?
ヘルナンデス:ほとんど理性を失いかけてたな(笑)。いや、分からん。ただムカついてて、首が見えたから「クソが!」って感じだったよ(笑)。
でも結局のところ、対戦相手のロマン(・ドリッゼ)には敬意を表するよ。タフな野郎だ。素晴らしい男で、メディアデーでもずっとナイスガイだった。ただ、殴られたりして試合が始まると、俺はカッとなって、我を忘れて、相手を倒したくなるんだ。でも、それは個人的な感情じゃない。「俺を殴りやがって」ってだけのことなんだよ(笑)。
「誰と戦うかなんて、マジでどうでもいい。本気でそう思ってる」
──あなたはロマン・ドリッゼをキャリアで初めてストップ負けにした選手になりました。その事実は、この勝利をさらに特別なものにしますか?
ヘルナンデス:もちろんだ。最高だよな。ランキング1位のヤツだって、彼と大戦争を繰り広げたんだろ? それが俺にとって何を意味するか。俺がここに来て、あいつを圧倒して、全く苦戦せずに絞め落としたんだ。だからみんな、俺のことを覚えとけよ(笑)。
──ここ2年を除けば、あなたは圧勝しても1年ほど試合から遠ざかり、ファンに忘れられてしまうというサイクルでした。しかし、この2年間は年2回のペースで戦えています。ようやくコンスタントに試合ができるようになって、いかがですか?
ヘルナンデス:ああ、ずっとアクティブに戦うことが目標だったんだ。ただ、怪我があったり、最初は親父が亡くなったことを乗り越えなきゃならなかった。あれは本当に辛かったよ。
でも、それを乗り越えてから、今では8連勝中だ。集中力を取り戻して、頭の中を整理して、全てを立て直す必要があったんだ。ジムでみんなをぶっ倒そうとするバカな真似はやめて、コーチの言うことを聞くようにした。そうじゃなきゃ、また自分が怪我するだけだからね(笑)。本当に彼らの声に耳を傾け始めたら、見ての通り、全てが好転したんだ。
──ミドル級の上位戦線は混戦模様です。パリでの次期挑戦者決定戦の噂もありますし、あなたもそこにいます。もしもう一試合挟む必要があるなら、例えばショーン・ストリックランドとの対戦などはいかがですか?
ヘルナンデス:誰と戦うかなんて、マジでどうでもいい。本気でそう思ってる。コンテンダー同士のBMFベルトみたいなものがあったら、面白いとは思うけどな。でも、俺が欲しいのは本物のタイトルだけだ。金を稼いで、家族の人生を変える。俺がこのクソみたいなことをやってる理由はそれだけだよ。
──あなたの口の悪さはネットでも話題です。「2秒に1回は汚い言葉を使っている」と言う人もいますが、そういう人たちに何かメッセージはありますか?
ヘルナンデス:マジで分からん。これが俺なんだよ。DC(ダニエル・コーミエ)とかには「直せ」って言われるけどな。まあ、ベルトを獲るしかないだろ。チャンピオンはやりたいようにやるもんだからな(笑)。
──試合中、あなたは何度もロマンを倒しましたが、その度に立たせていました。その理由は何だったのでしょうか?
ヘルナンデス:あいつはグラウンドが危険なんだ。ロマン・ドリッゼを知ってるなら分かるだろ?あいつは寝技がとんでもなく強くて、力もクソ強い。あんなヤツにグラウンドでガッチリ組まれたくはないんだよ。
これもコーチのゲームプランさ。言った通り、俺はコーチの言うことを聞いてきたし、彼らが俺を間違った方向に導いたことは一度もない。だからチームを信頼してるんだ。
──「パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト」のボーナス獲得、おめでとうございます。使い道は決まっていますか?
ヘルナンデス:子どもたちがいるからな。支払いを済ませて、牧場を完成させないと。田舎に戻ろうとしてるんだ。子どもたちが良い幼少期を過ごせるようにね。
──ラスベガスでの計量時間が1時間だったことに戸惑ったとのことですが、他の場所では2時間のこともあります。計量時間はどこでも統一すべきだと思いますか?
ヘルナンデス:正直、俺がもっとちゃんと注意を払うべきだったな。嘘はつかないけど、俺、この大会の対戦カードに誰が出てるかすら知らなかったんだ(笑)。本当に何も気にしないんだ。素晴らしいチームがいるから、俺は空港に現れて、ただ彼らについていくだけ。あとは何とかなるもんさ(笑)。
試合の見逃し配信はこちら(視聴可能期間:9月8日 23:59まで)
▶ https://video.unext.jp/livedetail/LIV0000009774